埴輪はどこかへ

楽しさも、憂いも、全て旅の中にある。

2021会津庄内下越旅行:2日目ダイジェスト

鶴岡市で過ごす素敵な1日。

きらきら日本海パス(坂町から羽後本荘までの羽越線と、米坂線坂町から越後下関陸羽西線余目から古口に加えて、主に村上駅鶴岡駅酒田駅を発着する路線バスに2日間乗り放題の切符)を使用。新潟ー坂町は別途購入しています。

行程(2021.9)

4:56新潟→5:52村上: 白新線/羽越本線 快速村上ゆき

6:00村上→7:38鶴岡: 羽越本線 普通酒田ゆき

7:53鶴岡駅前→8:48羽黒山頂: 庄内交通 エスモールBT→羽黒山

10:40羽黒随神門→11:17鶴岡駅前:庄内交通 いでは文化記念館前→エスモールBT

14:08致道博物館→14:39善寶寺:庄内交通 エスモールBT→善寶寺→湯野浜温泉

15:10(+2)善寶寺→15:17(+3)大山荘銀前:庄内交通 湯野浜温泉→善寶寺→エスモールBT

15:23(+7)大山荘銀前→15:33(+6)加茂水族館:庄内交通 エスモールBT→加茂→湯野浜温泉

17:25加茂水族館→18:01エスモールBT:庄内交通 湯野浜温泉→加茂→エスモールBT

 

人生で初めて4時台の電車に。この時間の乗り継ぎはとてもよい。18きっぷシーズンでもないが乗客は皆無ではなく、新潟の朝は早いと感じた。

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薄明の豊栄から



新潟駅のホームにはすでに他の方面に行く電車の乗客もいた)。車内で 朝日は昇る 私は旅する を済ませてから村上駅に到着。9月というのにガンガンに焚かれた暖房になんとなく東北の秋の訪れを感じました。この区間国鉄気動車は完全に駆逐され今では新車のGV-E400 ばかり。車内で腹痛に襲われて困っていましたが、トイレが大変清潔で感動しました(きっとキハ40だったら鶴岡まで悶え苦しみながら耐えていたと思う)。きれいな窓から眺める笹川流れ区間もなかなか快適でこれはこれで旅情があるのではないかと感じました。

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あたらしいも、ふるいも、うれしい

 

鶴岡駅に到着すると、すでにバス停にはちらほらと同じ行先の人が集っていて、バスは座席が全て埋まった状態で発車。バスは庄内平野を突き進み、山裾の情緒ある手向の宿坊街を通り抜け、もう少しでバスのルートから外れる未改良な区間をそろそろと通り、ワインディングロードをがしがしと登り、羽黒山頂の駐車場に到着しました(山頂という名前では拍子抜けするようなところだが、お土産に玉こんにゃくがあって山形を感じる)。

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遠くに市街地を眺める

駐車場からは至って平坦な道であっけなく(石段を登ることによって自分の過去を反省し浄化するんではないのですか?)出羽三山神社の三神合祭殿に到着。巨大な茅葺き屋根の社殿は、見たことのない屋根の形状をしており、初めて目にするとスケール感がおかしくなったかと思うぐらい圧巻。お参りをするときにごく近くまで行ってみましたが、中も数百人は入れそうな巨大な空間で、名前の通り3つの神社を束ねる立派な施設となっていました。朱印帳を持っていくのを忘れたのと、前の朱印帳が終了しそうだったのでここで購入。三山を象った意匠がここならでは。

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語彙力が足りず感動をお伝えできません

少し時間があったのと、丑歳御縁年で特別展をやっていたので博物館へ。湯殿山御沢仏御尊像を拝観しました。地方の山岳信仰文化の中でも特にハイレベルな仏具や仏像に感動しました。

しばらく過ごしてから石段下りをスタート(本当にそれでいいんですか?)。登りの人はもう登山の気持ちなのでひたすら挨拶される。下りの人は体感では少なくて、登りの人の方が多いように感じたけれども皆さんどうやって移動なさってるんでしょうか、時間帯の問題?

杉並木は自然林と同化しながらその存在感を失わず、その合間から差し込む穏やかな秋の日差しと垣間見る澄んだ青空は美しい。足元の石段は時々不均等になりながらも着実に手向に向けて続いています。

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だいたい人が映り込まないように写真を撮ってしまうので、賑わっていることが表現できない

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一様にのぼり/くだり というわけではない

途中にある茶屋を(下りで全く苦労していないので)通過してしばらくして国宝五重塔へ。東北で五本の指に入る有名な建造物ではないでしょうか。(といいつつ他を上げ出したらキリがない、強いて5個にしろと言われたら瑞鳳殿瑞巌寺中尊寺金色堂弘前城、そしてここぐらいか?)

 

素材の色をそのまま生かした(ように現段階では見えている)国宝五重塔はもともと神仏習合霊場だった羽黒山にあった伽藍を備える大寺院のひとつの堂宇として建てられたわけですが、悠久の時を経て寺院は五重塔を残して消滅してしまった。大木の林立する薄暗い森の中で素朴な佇まいを見せているこの建築も、古くの信仰の繁栄を伝える一種のモニュメントとしての役割が大きい。今でも多くの観光客が(本殿までは行かないとしても)この五重塔だけは視界に入れたいと大挙して訪れていました。

 

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凛とした姿が良い

そのまま人流に逆行して随神門を通過し、外に出ていでは文化記念館へ。期間限定で入場料が割引されており、かなりお得に羽黒地域の文化習俗について学習することができました。

そのあとは鶴岡駅前までバスで戻りました。いわゆるオタ席に近いところに座っていたので大鳥居もしっかり視認。

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稲穂とのコントラストが良い

昼ご飯は悩んだ挙句、フルーツショップ青森屋のフルーツタルトと、FOODEVER内のパティスリー、ファリナモーレドルチェのだだちゃ豆ジェラートを選択。全く昼「ご飯」にはなっていないですが、山形といえばやっぱり美味しい果物やスイーツは外せないのでこれで満足です。

2022年に入ってから何らかのテレビ番組で青森屋が取り上げられていたそうですが、それもうなずける納得のおいしさでした。

 

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テイクアウトなのでうまく写真が撮れず、憤怒

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山形にしかない味

鶴岡の市街地は道幅も全体に広く整理されていて、駅から離れた独立した中心街にはアーケードがあり、まちなみと城下町自体の面影がそこまで残っていないという印象でしたが、各々の建築の保存の観点からはとても素晴らしい状況で、中心市街地に重要文化財がなんと5棟も残存しています(移築保存含む)。これらを巡ってみました。

 

初めに風間家無量光苑釈迦堂(国登録有形文化財)。明治末期建築の風間家の来客接待用の別邸のような建物。それほど大きくない建物でありながらも、よく配置の考えられた庭を眺める落ち着いた佇まいを見せていました。受付の方が親切に解説してくださるのも特徴。

 

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釈迦堂の庭

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釈迦堂(逆光が激しい...)

続いて風間家丙申堂(重要文化財)。まさに丙申の年に建造されたのでこの呼び名。隣町酒田で大きな地震(1894年の庄内地震)が起こり家屋倒壊や火災の被害も大きかったことから、この建物では屋根にトラスに類似した構造を採用しています。また庄内地方は冬の季節風が大変強い土地であり、屋根が飛ばないように大量の石を敷き詰めた屋根葺きの手法は、建物への負荷が大変大きいため現在ではほとんど用いられていない工法になっています(他に酒田市の鐙屋でもみられる)。部屋数も多く、鶴岡の代表的な商家として栄華を誇った風間家の財力を感じました。

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葺き替え後数年、落ち着いてきた石置き屋根

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トラス構造で屋根裏を開けた天井の高い部屋も出現。

その後すぐ近くにカトリック鶴岡教会の天守堂(重要文化財)。1903年頃に建築され現在も礼拝に用いられる現役の教会です。ミサの時間ではなかったので無人でしたが、自由に内部を見学することができ、日本人の棟梁がその感性で西洋を完全に表現した様子を見ることができます。長崎の隠れキリシタン遺跡群の教会とはまた雰囲気の違う、軽やかな見た目の教会建築です。

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全体像を収めるのが意外と難しいです(高さがかなりあるので)

そのあと荘内神社へ。庄内藩は大きな藩でしたが城郭施設としての痕跡は堀ぐらいしか残っていないですね(米沢とかと同じく、神社に転用されているタイプ)。神社の前では祭りに向けて子供達が舞の練習をしており、活気がありました。境内は宝物庫を含め大変きれいに整備され、花手水も美しい。

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賑わいが創出されています

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ある意味疫病禍が敷衍させた芸術と言えるか

そして鶴岡市街地で外せないのが致道博物館。旧西田川郡役場(重要文化財)、旧鶴岡警察署庁舎(重要文化財)、旧渋谷家住宅(重要文化財)を中心とする移築型建築博物館です(内部には地域の歴史などの展示もある)。その様子はさながら庄内の明治村。それぞれの建築は大変よく保存されており、建築を大事に使用し続け、その役割を終えたのちにも後世に伝えようとする先人の心意気に感動しました。旧渋谷家住宅は市内山間部田麦俣に多くあった多層建て兜造り民家の代表作であり、耐雪と養蚕に適した作り。公共交通で田麦俣を訪れるのはなかなか厳しいのでここで見ることができてよかった。

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西田川郡役場(西田川郡鶴岡市の西部を指す)。改修中で内部は見学できませんでした

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旧鶴岡警察署庁舎。青色の洋館、お洒落で良い。

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旧渋谷家住宅。ここにあるとある種異質に見えるかもしれない

致道博物館から庄内交通のバスに乗車。一路大山方面を目指し、善寶寺に到着しました。バスが湯野浜温泉まで行って帰ってくる数十分の間で急いで参拝。境内の建築の多くが登録有形文化財に指定されており、また霊験あらたかであることから多くの参詣客が訪れていました。

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とても古いというわけではないが、組物の圧力がすごい

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開運した

バス停に戻ってみると、僅かにバスが遅延しており、もともと2分しかなかった乗り継ぎは完全に蒸発しかかってしまった。大山荘銀前ダッシュ(勝手に名付けないでください)を執り行い、時刻は過ぎていたが乗り継ぎ先のバスをロケーションシステムで調べてみると、なんと遅れている(助かってしまった)。やっぱりロケーションシステムってあると安心しますね。

そのまま来たバスに揺られて加茂水族館へ。多くの公立中学生が英語の時間にこの水族館の復活物語みたいなのを読まされるだろうと思う。当時はそんなに興味がわかなかったがせっかくここまで来たら寄ってみるかという軽い気持ちで入場。入場料は¥1000と、水族館としてはやや安めの設定。

中に入ると小さい子供から若いカップル老夫婦までありとあらゆる人が大量にいてしばらくは魚より人を見る感じになってしまったが、徐々に閉館時間に近づき、目玉のクラゲ・コーナーにたどり着く頃には館内はかなり落ち着いた様子になっていた。音もなくクラゲが水槽の中を水流に流されながら上下している姿は、我々を脱力させるような何かを持っていました。クラゲはだいたい毒々しいとか漁業への悪影響が大きいとかメインの展示物ではないとかそういう感想を持たれがちですが、ここまで多くの種類を揃え、しかも繁殖させ、美しく展示するという努力に感銘を受けました。水槽越しでレンズを向けるのはなかなか難しいのでぜひみなさんその場にいってこのすばらしさを確かめていただきたい。

 

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結局長居してしまい、閉館のチャイムのギリギリまで大水槽の前で粘ってしまいました。半年ぶりぐらいに水族館に来ましたがやっぱり癒されますね。

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大水槽の前のストリートピアノをいろんな人がいじっていた

閉館からバスまで30分弱あったのでどうしようかと思いましたが、近くの大岩の上に立っている灯台から眺める海と沈みゆく夕日が美しく、むしろバスはもうちょっと遅く来てほしいぐらいの気持ちになってしまいました。バスに乗る人も乗らない人もみんな灯台の近くで写真を撮ってから帰って行きました。人生に日本海成分は必要。

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振り返れば鳥海山

そのあとバスで市街地へと戻り、エスモールバスターミナルへ。地方都市のものとは思えないきれいに整理された屋内型のバスターミナルで、大きなショッピングセンターまでついており驚きました。夜ご飯もかなり悩んだあげく、エスモールの中の郷土料理店のようなところで、庄内地方名産の麦切り。細いがこしのある麺が特徴ですが、さらさらと食べ終えてしまいました。庄内平野は米のイメージしかなかったですが小麦系の郷土料理もあるんですね。

 

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麦切り。

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机に向かわないといけないときにご使用ください。

そのあと郷土の和菓子や乳製品をスーパーで仕入れ、投宿。さすが大藩の城下町と東北随一の名社、濃い1日になりました。