埴輪はどこかへ

楽しさも、憂いも、全て旅の中にある。

2022四国旅行:6日目ダイジェスト

流れの変化に、思いを馳せながら。

 

少し更新の間が空いてしまいましたが、四国旅行も6日目。前回は高知市から室戸周りで徳島市までの行程を紹介しましたが、今回は徳島市から内陸周りで岡山市までの行程をご紹介します。今回で四国編は終わりですが、実はそのまま別の旅行につながっているので、更新は引き続き行います。

 

とりあえず朝の徳島市を散歩。中心市街地は徳島駅からは少し離れ、橋を渡った先に細長く展開しています。山も接近している中で、僅かな平地と砂州をうまく生かして造られた都市は、かなり道路網も立派で、全蓋式アーケードなども備えています。ただ、休日の早朝の時間帯、わりと車はありましたが街を歩いている人の姿はほぼ見られず、まだ目を覚ましていない街を一通り眺めるという感じになりました。

 

徳島駅からは徳島線で石井へ。石井駅跨線橋はまさかの板張り。よく訪れる旧役場や旧小学校の階段を彷彿とさせます。

 

つづいて鴨島へ。駅の正面の通りの歩道には屋根が付けられ、それにほぼ並行する「銀座通り」にはなんと全蓋式アーケード。商店も割と生き残っており、地域の中心としての矜持を感じます。

 

そして列車は終点の穴吹駅に滑り込みました。駅を出ると正面にはロータリー・国道・そして吉野川しか見えません。穴吹の市街地は少し東側の支流との分岐地点にあります。この河川の分岐点の支流沿いの僅かな平地に集落を作るのがまことに四国山地らしい。

 

私はそちらには向かわず、駅前の長大な歩道橋で吉野川をまたぎ、堤防をひたすら進んでいきます。春の陽気、あまりの遮るもののなさに汗がにじむほどです。

 

そして脇町に到着。穴吹から脇町にバスがあるといいのですが日中の数本しかなく、歩いたほうがよい場合がほとんどです。脇町はうだつの上がる街並みとしてかなり早い段階で「伝統的建造物群」としての観光振興を始め、観光地としての地位を獲得しているように思えます。私が今回訪れた他のどの場所よりも観光客が沢山いらっしゃいました。

 

基本的には吉野川に平行な一本道沿いにうだつをあげた民家が並んでいます。脇町のうだつは袖壁が発展したような一重のタイプで厚みもあり重厚です。(今回は訪れることができなかった)貞光の多重うだつにも興味が湧いてきました。また、建築意匠的な話をすれば、岐阜県美濃市にある「うだつの上がる町並み」にあるような屋根を越すほどのうだつも必見です。

藍やその加工品で賑わった街は現在ではその商業的機能をロードサイドに譲っていますが、現在でも観光客向けの藍染店はいくつか存在して、当時の栄華を今に使えています。修景もかなり徹底されており美しいという印象を受けました。

再び穴吹駅まで歩いて戻り、池田方面の列車に乗り込みます。乗客はほとんどが学生で、完全にローカル線の風情の中、吉野川沿いの集落を結びながら遡上していきます。割と大きな街が多いように見えるのは完全に鉄路と国道が並行しているからでしょうか。

 

佃駅で向かい側に止まっている土讃線普通列車に乗り込み、山を越えます。途中の秘境駅坪尻では親子連れの姿がありました。運転手が前後を行き来しており大変そう。

 

そのまま多度津で乗り換えて丸亀まで。駅から港まで歩くと、振り返ればそこかしこの建物の隙間から丸亀城天守が覗きます。

少しレトロ感のある待合所で速やかに切符を購入してフェリーに乗り込みます。30分少々で塩飽本島の泊港に到着。北海道/本州/四国/九州と架橋されていない有人島に人生で初めての上陸を果たしました。

旅の表象

夕暮れの船着き場は家路を急ぐ人が多く、すぐに港から人気はなくなってしまいました。

 

港から歩いて20分ほど、笠島地区の上にさしかかりました。笠島地区は塩飽水軍の本拠地として栄えた集落で、江戸時代には瀬戸内海の海上交易を支える主任の根拠地として存在感を放っていました。現在では海岸線におおよそ平行なマッチョ通りと、塩飽勤番所方面にまっすぐ抜ける小さな峠へと登っていく東小路沿いに極めて密度の高い街並みが残っています。特にこの2本の通りが交わる辻の雰囲気は、他の伝建ではみられないほどの優れた景観です(全方向に伝統的な家屋があるという点で)。夕方なので地元の方数人とすれ違った程度で、観光客の姿もなく、たいへん静かな中での見学となりました。斜面を緩やかに登る方向には幾筋かの小道があってそれもまた風情がありますが、やはり核心部は資料館あたりの特徴的な意匠をもつ蔵や家屋群でしょう。浜に出れば向こう側には四国の社会を大きく変化させた瀬戸大橋が正面に見えます。昔とヒトやモノの流れが大きく変化した現代、人並みにもその豊かさの指標のうつろいを眺めるものでした。

 

帰りは小さな高速船で丸亀へ。坂出で乗り換えて岡山まで。5日間強にわたる四国滞在はこれでおわりです。これだけ滞在してもまだ見足りないものがあるので四国は深いですね。

最初にも申し上げましたとおりこのまま次の旅行に接続しています。ぜひこれからもお読みいただけると幸いです。