埴輪はどこかへ

楽しさも、憂いも、全て旅の中にある。

公共交通で巡る五島のしまたび[後編]

残すだけではなくて、保つということ。

 

おはようございます。路線バスと船で巡る五島の旅の後編(2日目)です。前編に比べるとだいぶ軽い記事なので、ぜひ前編も合わせて御覧ください。

 

昨晩福江に戻ってきたのが20時過ぎで、完全に朝ごはんを調達しそびれていました。福江にはほっともっとやコンビニもあるのでそこで朝に購入するというのもできはしますが、それだとなんだか味気ないので朝から営業している福江港の脇の中華料理店で味噌ちゃんぽんをすすります。ちゃんぽんが味噌味というのは初めて食べましたが意外といけますね。船のチケットはどの会社のものも割と直前にならないと発売してくれません。

そこまで天気がいいわけでもなかったので、次の目的地でレンタサイクルではなくバスを使うことにして船の時間を繰り下げ、福江の街を一周します。

 

まず遠くに若草山っぽい色をした鬼岳がひょっこりとその曲線的な姿を現しているのが特徴的。

武家屋敷通りの連続的な石塀も割と他には見られないもので、石垣の上にかまぼこ型に丸石を積み上げているものです。万が一の侵入者があったときにはおそらくその石が崩れて音を出す、現代風に言えば庭の防犯砂利のようなものでしょうか。

福江は佐渡の両津や隠岐の西郷に比べても栄えているように感じました(徒歩圏内にチェーンのスーパーやドラッグストアがちゃんと集積しているということだけかもしれませんが)。離島を公共交通で旅行をするうえではコンパクトな市街地は頼もしいものです(気をつけないとひもじくなることも十分あるため)。

福江での散歩を終えて港へ。

 

[11]五島旅客船 奈留島港ゆき 福江港奈留島

 

高速船タイプの船で出航。フェリーオーシャンと高速船ニューたいようが福江港から奈留島港(奈留島)や土井ノ浦港(若松島)、郷の首港(中通島)を結んでいますが、便によって寄港地や終着地が異なるので十分注意が必要です。そういえば中通島から若松島に渡るバスがデマンド化されてしまったので、この航路が唯一若松島に公共交通でたどり着く手段になっています。

 

この便は途中の奈留島港止まり、数十人が乗っていて割と乗車率高め。奈留島港入港の少し前に目を凝らすと、車道が通じていない離島の中の陸の孤島、五輪集落の姿を垣間見ることができます。カメラを必死に向けましたが、少なくとも肉眼では新五輪教会堂がかろうじて視認できる程度でした。五輪集落は久賀島に位置していますが、福江島から久賀島に渡るフェリーから接続する島内の公共交通は観光客が利用できるダイヤではなく、徒歩にも現実的な距離ではないため、運転したくないとなればこのように遠くから仰ぎ見るしかありません。むしろ田ノ浦港からより奈留島港からのほうが近そう。

左端の赤い建物がおそらく新五輪教会堂

奈留島港は太古の新造に合わせて市街地から離れた場所に新しく整備されました。ターミナルには売店と喫茶が一応ありますが、そのまま放っておくと昼ごはんを食べそびれてしまいます。しかし救世主があり、ターミナルにある観光案内所に集落の中心部にあるみかんや食堂の出前メニューが備え付けてあり、お願いすると時間に合わせて出前をとることができます。バスまで少し時間があったので先に予約しておきました。

 

バス停がかわいい。島内のバス停の統一規格のようです。

[12]奈留島バス 大串線 皺ノ浦ゆき ターミナル→江上

 

念願の江上天主堂へハイエースでアクセス。港から江上天主堂までは8km近くあるため自転車だとそれなりに疲れるはずです。ちなみにバスは片道¥350でした(2023/2現在)。地元の方の利用もちゃんとあります。

 

奈留島の市街地は割と稠密で栄えていました。また深く切れ込んでいる湾沿いにもそれなりの数の家屋が立ち並んでいます。立派なトンネルをくぐって久賀島側に出ると世界遺産江上集落です。トンネルをせっかく作ったのにすぐに小学校が廃校になってしまったと運転手の方が嘆いていました。

バスが皺ノ浦に向かい、いくばくか待機して、そして戻ってくるまで20分と少し。これが私の江上での持ち時間です。これに合わせてちゃんと教会堂内部の拝観予約もしてありました(前回の記事で触れていませんでしたが、世界遺産の構成遺産になっている教会堂の多くで、教会堂の内部の拝観は事前にWeb上でフォームを書いて提出する予約制になっており、現役の教会堂では写真撮影が禁止されています。詳しくは公式サイトをご確認ください)。

江上教会は木造。この2日間で、木造、石造、煉瓦造と巡ってきました。鉄筋コンクリート造はまあよしとして一周したという感じがあります。ちなみに前編で述べたか忘れましたが、この旅行の動機は2年ほど前に、長崎市外海の出津教会堂と出津救助院を訪れて、その空間づくりに甚く感動したことなので、実は内部空間に一番フォーカスしたいところです(が写真撮影禁止なのでここで論点を共有できないのが残念)。なんだか山陰のわりかしジメジメしたところなのでよく木造の建物が持ちこたえられているなと感心したところ。やはり腐食対策として、教会堂内部の柱はベンガラを塗ってからその上に(赤色のままだと教会の内装としては適さないので)木目を手書きしたとのこと。信徒の教会に対する思いの強さが伺えます。

現在は江上集落もほぼ現住の家屋がなくなってしまったので奈留教会の管理下に置かれているとのこと。五島はもともとかなり環境の厳しいところにも集落が存在していたゆえに、急速な過疎化による縮退、極端な場合では無人島化などがところどころで発生しているのが考えさせられるポイントです。

林の中に凛として建つ姿を拝んで帰りのバスに乗り込みます。

[13]奈留島バス 大串線 ターミナルゆき 江上→ターミナル

長崎ゆきの船に接続している便だからかそれなりに乗客がいらっしゃいました。ターミナルに着くとあたたかい皿うどんが届いていました(その場で現金精算です)。美味しくて感動。ところでソースをかける文化があるんですね。店内でも出前でも、奈留島を訪れたらぜひいただきましょう。売店にあった鯛味噌も美味でした。一部の情報では船の運賃が現金払いとあった気がしますが、九州商船はクレジットカードが利用可能です(五島旅客船はNG)。

 

[14]九州商船 フェリー椿 長崎港[奈留島、奈良尾経由] ゆき 奈留島港→長崎港

タラップがかなり手作業だった

奈留島から直行で長崎市へ向かえるとても便利なダイヤ。3時間30分ぐらい寝ていると長崎市街地の至近まで連れて行ってくれるのはとてもありがたい。福江→奈留島の利用者もかなりの数。逆に奈留島で乗り込む人も多数です。繁忙期の対策か、船室が福江発の人だけで埋め尽くされないように奈留発や奈良尾発の区間が事前に設定されていました。この日はそんなに混雑していませんでした。

 

長崎市街地は2年ぶりぐらい。海の上から眺めるのもいいですね。世界遺産ジャイアント・カンチレバークレーンも対岸から見るよりは大きく観察できます。

昼下がりの長崎市中心部・大波止に到着。少しだけ続きを。

 

[14a] 徒歩 大波止崇福寺

運動不足だなと思ったので歩きました。少しだけ坂を上り下りして、浜町アーケードをひたすら抜けてその先へ。2年前は東山手や南山手のあたりを重点的に見て、国宝かつ世界遺産大浦天主堂も内部拝観したところ。長崎県の国宝の建造物は大浦天主堂崇福寺の2箇所なので、崇福寺も行ってみることにしました。崇福寺は長崎に出入りしていた唐船の船主が媽祖堂を建てて航海の安全を祈願したのが由来の、黄檗宗の寺院。

 

路面電車の行き先にもなっている割に、実際に訪れてみると観光客の姿はまばら。大雄宝殿は1646年、第一峰門は1695年再建のかなり古い建築物で、異様な規模の組物や色彩のセンスに異国情緒を感じます。第一峰門は寧波で組んだ材木を再構築するプレハブタイプ(隠岐の焼火神社も大阪で組んだものを現地で再構築していましたね)。

 

[14b] 徒歩 崇福寺長崎駅

 

中華街に寄りながら散歩。平日なので中華街はあまり店が開いていませんでした。

以前は特急かもめで長崎にやってきましたが、もう新幹線が完成していて月日の流れを感じます。私は高速バスで佐世保に向かいました。

今回のゴール、佐世保

短い記事でしたが、夜行入りすると五島に一泊でも意外と楽しむことができるということを示せたと思います。佐渡と五島は車なしでもかなり楽しむことができるので、一人で離島旅を計画なさっている方がいらっしゃれば是非参考にしていただけると幸いです。

 

次回記事はとうとう海外編です。この記事にもぜひスターをつけて応援してくださると幸いです。